内痔核(いぼ痔、脱肛)

肛門の病気のうち、内痔核はもっとも頻度の高い疾患であり、辻仲病院では毎年約2,000件の内痔核の手術を行っております。ここでは痔核について詳しく説明いたします。

内痔核の症状

内痔核の症状として多いものは、「出血」と「脱出(腫れ、脱肛)」です。かなり大きくなると痛みを伴うこともあります。内痔核の重症度は、脱出(腫れ、脱肛)の程度に応じてI ~ IV 度に分類されます。

度数 症状
I度 排便時に脱出しない。 出血が主な症状。
II度 排便時に脱出するが、自然に肛門内に戻る。
III度 排便時に脱出して、指で押し込まないと肛門内に戻らない。
IV度 脱出したままで、指で押し込んでも戻らない。
嵌頓(かんとん)痔核 痔核が大きく腫れあがり、戻らなくなってしまったもの。強い痛みを伴う。

 

内痔核(いぼ痔、脱肛)についてのQ&A

治療はどんなものがあるの?
内痔核の治療は、上記の重症度に準じて決定されます。

I度~II度の痔核

基本的に軟膏や座薬で対処します。ただしII度の内痔核でも、たびたび脱出する場合には手術をお勧めしております。

III度~IV度の痔核

軟膏や坐薬だけでは完全に治すのは困難です。手術をお勧めいたします。

痔の出血があります。どういう治療が良いですか?
少量の痔核からの出血であれば、軟膏や坐薬で改善することも多いです。出血量が多かったり、長い間出血が続いている場合には、パオスクレーという硬化剤を痔に注射する場合もあります。この方法は無害で出血を止める効果は非常に高いのですが、痔核の脱出(脱肛)を防ぐ効果は弱いです。

痔核が脱出する場合には、手術を考慮する必要があります。また、大量にふき出すような出血であれば、早めの手術を考慮した方がよいかもしれません。

痔の出血があります。腸の検査は必要ですか?
当院には、「痔から出血した」といって受診される方がたくさんいらっしゃいます。診察してみると、たしかに痔から出血していることが多いのですが、そうとも言い切れない場合もよくあるのです。

「肛門から出血した」という訴えを聞いた時、我々が一番警戒しているのは大腸がんの存在です。痔の出血と思って市販の軟膏をずっと塗っていたら、じつは大腸がんだったという話はたくさんあるのです。

若い人で「明らかに肛門からの出血である」と確信できないかぎり、出血のある人に大腸内視鏡検査をお勧めするのはわれわれの義務と考えています。実際これで命拾いをしている人は、月に1人や2人ではありません。

手術はどんな方法で行いますか?
結紮切除術

痔核の手術は、「結紮切除術(けっさつせつじょじゅつ)」という方法で行われています。この術式は、世界的に良好な治療成績が確立しており、現時点ではベストとされている術式です。全国の専門病院がさまざまな工夫をこらし、さらなる成績の向上につとめています。

術式を簡単に説明すると、「結紮切除術」とは痔核に流入している血管をしばって(結紮して)止血し、痔核を切除する方法です。痔核の数に応じて、通常1~3箇所の切除を行います。

痔核の状況によっては、PPHという器械を用いる方法や、「ジオン」という注射で痔を硬化させて治療(ALTA療法)する手術法もあり、より痛みの軽い手術を行うことも最近では可能となっています。

日帰り手術はできますか?
痔核の術後には、出血や痛みの起こる可能性が誰にでもあります。さらに排便のコントロールも重要となってきます。以上の理由から、痔核の手術を行う場合、原則として入院をお勧めしております。

日帰り手術は、軽症の痔核(小さな痔核が一箇所もしくは二箇所)の場合のみ行っております。また、硬化療法(ALTA療法)については日帰り手術で積極的に治療を実施しています。

痔核が大きい場合や、痔核が3個以上ある場合には、原則として入院手術をお勧めしております。また、軽症の肛門疾患であっても、高齢の方、重度の疾患がある方、遠方にお住まいの方などの場合、安全確実な治療を行うために、入院手術をお勧めしております。

内痔核の治療にPPHという治療法があると聞きました。この治療を受けられますか?
PPHとは、簡単に言うと特殊な器械を用いて痔を直腸の奥のほうに吊り上げ、痔を出てこなくする方法です。PPHは痛みが少ないのが特徴ですが、PPHに向くタイプの痔と向かないタイプの痔があります。PPHが可能かどうかは、診察した上で決定する必要があります。
内痔核の治療に硬化療法(ALTA療法)という治療法があると聞きました。この治療を受けられますか?
硬化療法(ALTA療法)は、簡単に言うと、痔核に注射の薬(商品名「ジオン」)を注入して、痔を硬化させてしぼませる治療法です。

硬化療法は痛みが少なく、切らずに治せるのが長所ですが、再発率が手術より高いのが難点です。治験(発売前に専門の医療機関で試してみること)の結果では、15%ほどの再発があるというデータがでています(手術では再発することはまれです)。

ですから当院では、排便時に頻繁に脱出して指で押し込むような方には、一度で確実に治せる手術をお勧めしています。一方、「どうしても切りたくない」という人や、「なにか簡単にできる治療があれば受けてみたい」というような方に硬化療法をお勧めしております。

内痔核にゴム輪をかけて治療する方法があると聞きました。この治療は受けられますか?
痔核の治療法のひとつに、マックギブニー法という方法があります。これは痔核に特殊なゴム輪をかけて、壊死させて落とす治療法です。

この治療法は日帰りで簡単にできるのが長所ですが、再発率が高く、内痔核にしか使用できない(外痔核に使うと痛い)ので、はじめから痔核の治療法としてお勧めすることはほとんどありません。他の治療(結紮切除術など)の補助的な位置付けとなることが多いです。

ただし、手術のリスクが高い超高齢者などに対し、手術のかわりに用いることはあります。

レーザーメスは使っていますか?
肛門科の日帰り手術では、レーザーメスを売りにしている病院もがあるようですが、当院および本院(辻仲病院柏の葉)では、現在レーザーメスは使用しておりません。

本院ではかつてレーザーメスを購入し、痛みや出血についてチェックしていた時期もあったのですが、通常の手術法とくらべてメリットはないという結論に達し、現在では全く使用しなくなりました。

レーザーは術中に出血が少ないのが売りですが、専門病院で訓練を積んだ医師の場合、通常の手術法でも出血はほとんどないのでレーザーのメリットを感じないのです。逆にレーザーはミリ単位の繊細な作業が困難なので、肛門科の手術には向かないという見解です。

手術して再発することはありませんか?
訓練を積んだ医師がきちんと手術を行えば、痔核の再発はまずありません。ただし術後も排便のコントロールが悪かったり、強くいきむようなことを繰り返したりすると、10年以上たって再び痔核ができる可能性はあり得ます。これは痔核の再発というより、別の場所に新たに生じた痔核というべきものです。
手術の合併症が心配です…
痔核の手術を受ける方がよく心配されるのが、「筋肉を傷つけて肛門がゆるくならないか」ということと「肛門が狭くならないか」ということです。

痔核の手術では、肛門の浅い層にある痔核だけを切除していきます。肛門括約筋はさらに深い層にあり、これを傷つけることはないので、肛門がゆるくなる心配はありません。「肛門がゆるくなった」と言われているのは、古いやりかたで痔瘻の手術を受けた方の後遺症であることが大半で、痔核の手術とは関係ありません。

「肛門が狭くならないか」という質問ですが、たしかに不慣れな術者が、多数の痔核を切除した場合には、肛門が狭くなる可能性はあり得ます。ただし専門の修練を積んだ医師の手術では、肛門が狭くなる恐れはまずないと言っていいと思います。

痔核の手術はどこの病院で受けても同じでしょうか?
辻仲病院グループにおける大腸肛門科の手術件数は現在、年間約3,500件となっており、これは全国でも1~2位を争う件数です。そのうち痔核の手術は最も多く、約6割を占めます。

一般の大病院では、痔核の手術は多くても年間数十件くらいしか行っておらず、しかも若手外科医が手がけることが普通です。痔核の手術は、大腸肛門の専門家以外には「簡単な手術」と思われているのかもしれませんが、この認識は完全に誤りです。

痔核の術後には、いろいろなトラブルが起こる可能性があります。たとえば・・・

  • 痔の再発(訓練を積んだ医師が手術を手がければ、再発はまずありません)
  • 肛門狭窄(狭くなること。これも専門家が手がければまず起こりません)
  • 大量出血(上級者がやっても、0.3~0.5%くらいの人に起こります。未熟な医師だと数%)
  • 強い痛み(個人差が大きい。医師の技術に加えて、敏感な人かどうかも影響します)
  • ひどい腫れ(ただし少々の一時的な腫れは正常な生体反応であり、誰にでも起こりえます)
  • 難治創(傷がいつまでも治らないこと)

など、実にいろいろなトラブルが起こりえます。これらのトラブルを起こさず、術後も順調に経過させるためには、押さえるべき数多くのポイントがあるのです。

痔核の手術は一見単純に見えるので、大腸肛門科の専門病院以外では、若手外科医の手術入門として位置付けられていることが多いです。
しかし専門的訓練を受けていない医師が、形だけまねして「見よう見まね」でやってしまうと、これらのトラブルが起こるか起こらないかは、ただの「運任せ」になってしまいます。

そして上記のトラブルが起こっても、「心配ないから様子を見ましょう」と言われてしまい、困った患者さんは専門病院を訪れるわけです。

もちろんどんな達人でも、これらのトラブルをゼロにすることはできません。ただし専門病院で十分な訓練を受けた専門家と、他の診療の片手間で痔の手術をやっている外科医の間には、歴然とした結果の差があることもまた事実です。そして専門家であれば、時に起こるこれらのトラブルに対しても、適切な対処をとることができます。

ポイントを確実に押さえた手術を行い、さらに万一起こったトラブルに対して適切な対処が行えるようになるには、専門施設で十分な訓練を受けた肛門外科医でないと無理だと考えられます。これは大腸肛門外科に限らず、どの専門分野の手術であっても同じことだと思います。

アルト新橋胃腸肛門クリニックでは、辻仲病院グループにて多くの大腸肛門科の手術の経験を積み、術者として数千件の大腸肛門領域の手術経験があり、大腸肛門外科専門医の資格を持ち、正しい痔核手術のポイントを心得た医師が手術を担当いたします。