
当院で肛門科日帰り手術を行っているのは、肛門科の専門施設としては全国屈指の診療実績を誇る辻仲病院グループで術者として数多くの肛門科の手術経験を持った医師だけです。
アルト新橋胃腸肛門クリニックで行っている肛門科の日帰り手術は、それほど重症でない疾患を対象に行っております。比較的重症の肛門科疾患や、高齢の方、重度の基礎疾患がある方、遠方にお住まいの方などの場合には、安全確実な治療を行うため、入院手術をお勧めしております。
なお、アルト新橋胃腸肛門クリニックにて診察を受け、入院手術が必要と判断された場合には、千葉県柏市の本院(辻仲病院柏の葉 )や、千葉県我孫子市の東葛辻仲病院 にて引き続き治療を受けることができます。
肛門科の病気についての解説
上に記載されているほどよくある病気です。下にいくほどまれな病気です。
- 内痔核(脱肛、いぼ痔)
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一般に「脱肛」とか「いぼ痔」と呼ばれるものです。排便時のいきみの繰り返し、力仕事、妊娠などにより肛門の血流にうっ血が生じ、いぼ状にふくらんだものを内痔核といいます。内痔核の症状として多いものは、「出血」と「脱出(腫れたり、とび出てくること)」です。かなり大きくなると痛みを伴うこともあります。
脱出しない痔核は薬で対処できますが、頻繁に脱出する痔核や、脱出したまま戻らない痔核は手術が必要です。また、出血がある場合には、大腸がんの検査を考慮したほうが良いかもしれません。
痔核は、比較的小さいものが1~2個なら日帰り手術が可能です。痔核が大きい場合や、痔核が3~4個ある場合には、排便コントロールや痛みの管理が重要となってきます。そのため、この場合には入院手術をお勧めしております。
- 裂肛(切れ痔)
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通常「切れ痔」と呼ばれており、女性に多い病気です。かたい便が肛門を無理に通過したために、肛門の出口付近が切れて裂肛となります。裂肛の症状は、「痛み」と「出血」です。軽症の裂肛であれば、便通の改善を行い、軟膏を使用することで治すことができます。
裂肛が慢性化して潰瘍になり、皮垂(みはりいぼ)や肛門ポリープといった突起が出現したり、肛門が狭くなる段階になってしまうと、薬で治すのは困難です。この場合には手術をお勧めしております。また、出血がある場合には、大腸がんの検査を考慮したほうがよいかもしれません。
裂肛の多くは日帰り手術が可能ですが、重症の裂肛で肛門が狭くなってしまった場合には入院手術が必要です。
- 肛門周囲膿瘍・痔瘻(じろう)
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人間の肛門にはもともと肛門陰窩というポケットが存在し、下痢した際などにここから細菌が侵入することがあります。その結果肛門のまわりに膿がたまった状態を肛門周囲膿瘍といいます。この場合、肛門のまわりが腫れて激痛が続きます。ときには38~39度の発熱を伴う場合もあります。
肛門周囲膿瘍は、痔瘻の前段階の状態です。肛門周囲膿瘍が進行すると、肛門陰窩と皮膚の間にトンネルが出来上がります。これが痔瘻です。肛門周囲膿瘍のほとんどは痔瘻に移行すると言われています。
痔瘻の症状としては、肛門の近くにできた穴から膿が出続けたり、腫れて痛みが出たりします。痔瘻は薬では治らないので、手術が必要となります。痔瘻を放っておくと複雑化することがありますので、早めの治療が必要です。痔瘻は浅いものであれば日帰り手術が可能ですが、通常は入院手術をお勧めしております。
- 血栓性外痔核
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いわゆる「血まめ」です。下痢や便秘で強くいきんだ場合に血流障害が起こり、肛門の外側に血栓(血のかたまり)ができます。運動やアルコールが原因となることも多いです。血栓は硬いしこりとして触れることができ、強い痛みを伴うことがあります。
小さい血栓のほとんどは軟膏で治りますが、治るまでに通常3~4週間はかかります。大きい血栓や、痛みが強いもの、薬で治らないものなどは、切開して血栓を取り除くと簡単に治せます。これは3分程度の日帰り処置で可能です。
肛門は敏感な部位であり、何の工夫もなく普通に血栓を切除すると相当な痛みがあります。当院では独自の工夫を重ねることで、ほとんどの場合、麻酔を注射するときの軽い痛み程度で切除することが可能となっています。
- 肛門ポリープ
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排便のときに、コリコリした小さくて硬いものが出てくる場合は、肛門ポリープの可能性が高いです。肛門ポリープは慢性の裂肛に合併することが多いのですが、裂肛と関係なく出現する肛門ポリープもよくあります。炎症で起こるポリープなので、大腸ポリープと違ってがんになる心配はありません。
ポリープは薬で治ることはなく、治すには切除するしかありません。肛門ポリープの多くは日帰り手術が可能です。ただし重症の裂肛に伴う肛門ポリープは、裂肛の治療も同時に行う必要があるので、入院手術をお勧めしております。
- 肛門周囲炎
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肛門周囲の皮膚に起こる「かぶれ」です。通常「かゆみ」や「ヒリヒリ感」を訴えて来院されます。夜間に掻いたりこすったりすることで、よけいに症状が悪化します。原因は大きく分けて、接触によるもの(直腸から分泌される粘液や便、せっけんや洗剤などの接触)と、カビ(カンジダなどの真菌)に分けられます。
接触によるものとカビによるものとでは治療が異なります。両者の判別は見ただけで大体可能なのですが、ときにまぎらわしいことがあるのでカビの培養を行うことがあります。接触によるかぶれであれば、ステロイドの入った軟膏を使用します。カビの場合には、カビを殺すクリームを使用します。
痔で肛門がデコボコしている場合には、直腸の分泌液がふき取りにくくなって痒みを悪化させるので、この場合には痔を切除することもあります。短期間ですっきり治らないことも多い病気なので、途中であきらめずに根気強い治療が必要です。
- 尖圭コンジローマ
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肛門周囲にウィルスが感染し、イボができる病気です。はじめは小さいイボですが、放置しておくと徐々に大きくなり、がん化することもあります。性交でウィルスに感染することがほとんどですが、感染経路が不明のこともあります。陰茎や膣にもイボができていることが多いので、泌尿器科や婦人科の受診が必要となることもあります。
いろいろな治療法が試されていますが、今のところ手術でイボを切除する方法が、一番成績が良好です。イボを切除しても、体内にウィルスが残っている間はまたイボが生えてきます。再発したら日帰りで切除を繰り返すことで、いずれ再発しなくなります。治療を途中でやめると、元に戻ってしまう恐れがあるので根気が必要です。
尖圭コンジローマは、小範囲のものであれば日帰り手術が可能です。広範囲のものは入院手術をお勧めいたします。術後に少しずつ再発してくるものは、ほとんどの場合日帰りで切除できます。
また、コンジローマ治療のためのクリーム(ベセルナクリーム)が使用可能となりました。これはクリームを塗るだけでコンジローマを治療できるという画期的な薬です。コンジローマができる部位によって、このクリームが使用できるケースと使用できないケースがあるので、正しい診断のもとで治療を行えば効果が期待できます。
- 膿皮症(のうひしょう)
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アポクリン腺という汗腺に細菌が繁殖し、お尻の皮膚の下に炎症が広がり、腫れや膿が生じる病気です。ときに痔瘻が合併していることもあります。
はじめは小範囲だった炎症が、周囲にひろがって徐々に大きくなります。何年も放置すると、お尻の皮膚全体が夏みかんの皮のようにゴワゴワになって膿が出続けるので、座るのも困難となります。
膿皮症は自然に治ることはまれで、ほとんどの場合手術が必要となります。手術では正確な切除の範囲を決め、感染している部位を完全に取り除く必要があります。中途半端な切除を行うと再発を繰り返すことがあるので、完全に切除するには経験を要します。
膿皮症は肛門近くの小範囲のものであれば日帰り手術可能ですが、広範囲のものや、痔瘻を合併しているものは入院手術をお勧めしております。
- 毛巣洞(もうそうどう)
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皮膚の下に毛髪がもぐりこみ、細菌が繁殖することで起こります。毛深い男性によく見られます。尾てい骨のあたりに膿のでる穴があったり、腫れたりするようなら、毛巣洞の可能性が高いです。
毛巣洞は自然に治ることはまれで、ほとんどの場合手術が必要となります。毛巣洞は日帰り麻酔が効きにくい場所にできるので、日帰り手術では困難なことが多いです。基本的に入院手術をお勧めしております。
- 直腸脱
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直腸を支えている組織が弱くなることで、直腸が垂れ下がって、肛門から脱出する病気です。高齢の女性に多く見られます。痔核とまぎらわしいことがあるのですが、専門家なら簡単に見分けがつきます。薬では治せず、治療は手術しかありません。
手術は大きく分けて2つあります。カメラを用いた手術で、おなかの中から直腸を固定する手術(腹腔鏡下直腸固定術)は、全身麻酔が必要となるのですが、成績が最も良いとされています。
高齢で全身麻酔の手術では負担が大きいと思われる場合には、デロルメ手術という方法の成績が良いので、この方法で行っています。これは脱出している直腸の粘膜をはぎとって、腸を縫い縮めて固定する方法です。直腸脱の手術の際には必ず入院が必要です。
辻仲病院のホームページである「痔プロ.com」内、「大腸肛門病の知識」のページ もご参照ください。
- 肛門括約筋不全
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高齢の女性によく見られる病気です。便がもれたり、下着が汚れたりといった訴えが起こります。出産で肛門括約筋が傷ついたり、加齢によって括約筋の締まりがゆるくなることで徐々に生じてきます。また、不適切な痔瘻の手術で、肛門括約筋を下手に傷つけることで起こることもあります。
多くは便通のコントロールと肛門括約筋の筋力トレーニング(バイオフィードバック)で改善することが多いのですが、肛門に大きな傷があって変形が強い場合には、手術で肛門の形を形成することもあります。手術の場合、比較的長期の入院が必要です。
- 妊婦の肛門疾患
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妊婦の肛門疾患で多いのは痔核と裂肛です。妊娠初期にはなるべく薬を出すのはひかえるのですが、妊娠5ヶ月あたりからは薬を使ってもまず大丈夫で、いままで問題が起こったことはありません。
痛みが激しくて耐えがたいときは、妊娠中期に限って手術することもあるのですが、できれば妊娠前に治しておいたほうが無難です。出産が終わってしばらくすると、自然と楽になることが多いです。
- 小児の肛門疾患
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排便のときに痛がる、出血するという訴えの場合、たいてい裂肛が原因です。便が硬いことが多いので、緩下剤で便を軟らかくし、軟膏をしばらくつければ割と早く治ります。
乳児の男の子で、肛門の周りが腫れたり膿んだりする場合には、たいてい痔瘻です。膿がたまったらその都度出してやれば、ほとんどの場合そのうち自然と治ります。小学生くらいになっても膿が出続けるようなら、手術を考慮する必要があります。
- 直腸肛門痛
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痔核や痔瘻、裂肛などといった病気がないのに、直腸や肛門の痛みを訴える状態です。夜間に急激に痛みが起こったり、座っていると痛みが起こったりと、症状は様々です。肛門を支配する陰部神経および肛門挙筋の異常で起こる場合や、肛門手術後の瘢痕(ひきつれ)が痛みの原因となっていることもありますが、多くは痛みの原因がはっきりしません。
痔に使う軟膏や消炎鎮痛剤はあまり効かないことが多く、筋肉の痙攣をとる漢方薬や、うつ病の薬のほうが有効なことが多いです。痛みが強い場合には、陰部神経ブロックという注射を行うこともあります。なかなか改善しない場合には、ペインクリニックでの治療が必要となるケースもあります。
- ホワイトヘッド肛門
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30年ほど前に行われていた内痔核の手術による後遺症のことを言います。直腸の粘膜が外に飛び出したり、下着が汚れたり、出血したりといった症状があります。このような合併症が起こるので、現在ではこの手術は行われていません。「30年以上前に痔の手術を受けて、また出てくるようになった」という場合には、このホワイトヘッド肛門の可能性があります。
小さく粘膜が飛び出してくる場合には、ゴム輪をかけてしばったり、小さく切除すれば治ります。大きく脱出してくる場合には、PPHという器械を用いて直腸のたるんだ粘膜を吊り上げて固定する方法の成績が良好です。手術には入院が必要です。
- 直腸瘤(直腸腟壁弛緩症)
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女性に起こる病気です。直腸と腟の間の壁はもともと薄く、これが加齢や出産により弱くなっていきます。直腸の壁が腟の方にポケット状に腟に膨らんでくるので、便が出にくかったり、残便感などが生じます。中年以降の女性が、便が出にくいために腟や肛門の周囲を押さえて排便するような場合には、この病気の可能性が高いです。
軽度のものは、緩下剤で便を軟らかくして、いきむのをひかえさせることで軽快するのですが、重症の場合には手術が必要です。腟と直腸の間の弱くなった壁を補強する手術を行います。手術には入院が必要です。
辻仲病院のホームページである「痔プロ.com」内、「大腸肛門病の知識」のページ もご参照ください。
- 直腸粘膜脱症候群
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排便時に強くいきむことが原因で、直腸の粘膜が刺激を受け、出血や粘膜の脱出が起こる病気です。大腸内視鏡検査で見ると、直腸に潰瘍ができていたり、粘膜の赤い隆起が見られたりします。直腸がんと間違われることが多いのですが、経験豊富な医師が見れば比較的簡単に見分けがつきます。
治療は、緩下剤で便通のコントロールを行い、「排便時に強くいきむことを避ける」ことが重要です。粘膜が痔核のように飛び出てくる場合には切除することもありますが、下手に切除すると再発することもあるので注意が必要です。
- クローン痔瘻(じろう)
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クローン病という原因不明の腸の病気から起こる痔瘻です。直腸にクローン病の潰瘍ができ、そこから穴があいて皮膚とトンネルをつくります。ひどい場合には直腸がせまくなり、便が出せなくなることもあります。原因不明の病気なので、現在の医学では完全に治すことはできません。
膿が出続けたり、痛みが続いたりといった訴えが強い場合には手術を行います。痔瘻のトンネルにたまっている膿をきれいにして、細いチューブを数ヶ月通しておくだけでかなり症状は楽になりますが、通常の痔瘻と違って完全に治すことは困難です。最近では「レミケード」や「ヒュミラ」という薬が使えるようになり、クローン病の治療は大きく進歩しています。
- 直腸膣瘻(ちょくちょうちつろう)
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「腟のほうからガスや便がでる」という訴えで来院されます。出産時に腟の壁が傷つくことで起こることが多いのですが、クローン病という腸の炎症が原因となっていたり、直腸の手術が原因となっていることもあります。
治すには手術が必要です。直腸と腟の間のトンネルをふさぐ手術を行うのですが、再発することもあってなかなか治療が難しいことがあります。入院も長期におよぶことがあります。
辻仲病院のホームページである「痔プロ.com」内、「大腸肛門病の知識」のページ もご参照ください。
- パジェット病、ボウエン病など皮膚のがん
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肛門周囲の皮膚にできるがんの一種で、まれな病気です。はじめは肛門周囲の炎症のように見えるのですが、軟膏を塗っても良くならず徐々に悪化します。組織をとって、顕微鏡で調べて初めて診断がつくことが多いです。
治療は手術で、病気の部位を広く切り取ります。入院が必要です。深くもぐりこんだ場合や、直腸がんを伴うこともまれにあり、この場合には直腸切断術(直腸と肛門を取る手術)が必要となることがあります。
- 肛門がん
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肛門の出口から、3~4cmの範囲内に起こるまれながんです。痔核などと間違われやすく、ごくまれに「市販の軟膏をつけていたけど治らない」といって来院されることがあります。肛門にできるがんには色々な種類があり、手術や放射線療法など、がんの種類によって治療方針が異なります。
辻仲病院のホームページである「痔プロ.com」内、「大腸肛門病の知識」のページ もご参照ください。
- 痔瘻がん(じろうがん)
- 3型、4型の複雑痔瘻を長年(10年以上)放置した場合に、ごくまれに発生します。痔瘻が急に痛みだしたり、ゼリー状の分泌物が出てくるようになった場合には要注意です。手術は直腸切断術といって、直腸と肛門を取り除く手術を行う必要があります。